この世界の片隅に(下巻)を読みました【その①ネタバレ注意】

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マンガ名:この世界の片隅に 下
著者  :こうの史代
掲載誌 :漫画アクション
出版社 :双葉社

中巻に続いて下巻の感想を書いていきます。

中巻ですずと周作の間のわだかまりが解消され、絆が深まりました。それと反比例するように戦争は激しくなっていきます。

以下、ネタバレ含みます。

なお、前の話が気になる方はは中巻その2を先に読んでください。

ストーリー

20年5月

義父と周作が働く呉の軍の施設で大規模な空襲があり、周作は無事帰宅しますが、義父の消息がわかりません。そして、今まで肩書が文官であった周作は武官になることが決まり、3か月間、海兵団で軍事教練を受けるため家を空けることに。

3か月間会えなくなる周作の顔を忘れないために、周作の寝顔を紙に描くすず。翌朝、軍服を着て出発する周作を見送るのでした。

20年6月

5月の空襲の後、行方不明であった義父の居場所がわかりました。怪我をしたため、海軍病院に入院していたのです。もうすぐ退院できるということで、一安心する北條家の面々。

そしてすぐに義姉は、明日にでも晴美を空襲が多く危険な呉から長男のいる下関に連れて行くと言い出します。義姉が駅で下関までの切符を購入している待ち時間の間、すずは晴美を義父に晴美の顔を見せるため、義父が入院している病院まで連れて行くことになりました。

ベットから置きあげれるまでに回復した義父。すずは義父から戦艦大和が沈没した事実を聞いて驚きます。そして呉に危険を感じ、晴美を下関へ疎開させるように言ったのは義父の勧めであったことを知るのでした。

病院からの帰り道、すずと晴美は突然空襲に遭遇します。近くの防空壕に入れて難を逃れる2人。豪の中で、鼓膜が破れるような轟音におびえる晴美を励まします。

2人が防空壕から出ると、あたり一面は瓦礫の山になっていました。駅に向かって手を繋いで歩き始めたところ、2人の近くに時限爆弾が…。すずは危険を察知して、慌てて晴美の手を引きますが、時すでに遅く…

時限爆弾の爆発により晴美は亡くなり、すずも晴美と繋いでいた右手を吹き飛ばされ、失ってしまいました。意識を取り戻すも寝たきりの状態のすず。目を開けると、周作にそっくりな義姉の顔が。

義姉は「あんたがついておりながら…。…人殺し!晴美を返して!」と泣きながらすずを責めます。義母は「義姉も気が動転している、本気で言っているわけではない。すずだけでも助かってよかった」と慰めます。

すずはあのときの光景を思い出し、「あの道に側溝があればよかった」「反対側の塀の穴に飛び込めば…」と晴美を守れなかった自分を何度も責めるのでした。

20年7月

再び呉の街を空襲が襲いました。なんとか焼かれずに済んだ北條家には、家を焼かれた近所の人々が避難してきています。そこにずっと家を離れていた周作が帰宅し、すずと久々の再開を果たします。すずは高熱を出してしまい、周作に倒れ掛かりながら「友達であるリンさんの無事を確かめてほしい」と頼むのでした。

すずの右手の治りが早くて良かったいう医者の言葉、家が焼けずに済んで良かったという義父、あんたが生きていて良かったという周作の言葉を思い出し、「どこがどう良かったんか うちにはさっぱり判らん。歪んでいる。」とすずは心を閉ざします。

そんなある日、妹のすみが広島から北條家を訪ねてきました。空襲で亡くなった人がそのまま道路に投げ出されているのを見て、手を合わせるすみ。すみの姿を見て、「歪んでいるのは私。まるで左手で描いた世界のように、私は歪んでいる」と感じます。

すみは、元気のないすずに「右手を亡くして、家のことが出来んかったら、北條家に居りずらいじゃろう。広島に帰ってこんか」と誘います。驚きながらもすみを見送るすずなのでした。

シーンは変わり、再び呉の街を空襲が襲います。すずは道端で機銃掃射に会うも逃げようとしません。それを周作が見つけて、慌てて道端の側溝に押し込みます。

「アホが 死ぬ気か」と憤る周作。そこですずは、「広島に帰ります」と告げます。

帰ろうとする理由を問い詰めながら周作は、この1年すずと暮らして楽しかったと説得しようとします。しかし、一向に折れないすずに、勝手にせえと言う周作なのでした。



感想

晴美の死

北條家で一番幼かった晴美が亡くなったことはとてもショックでした。晴美だけでも下関に疎開させようとしていた矢先だったのに…。義姉はすずに怒りをぶつけますが、この状況では無理もなく、すずもそのことを痛いほどわかっています。その光景を見ていた義母はすずをなぐさめますが、義母の強さを感じました。晴美はすずにとって義理の姪ですが、義母にとっては実の孫です。孫を失った悲しみは想像を絶するものであるはずなのに、自分の感情を爆発させることなく、嫁を慰めることは並大抵のことではありません。

ネタバレではかなり割愛しましたが、マンガでは晴美が亡くなってからのすずの回想シーンが細かく描写されています。いつも元気で前向きなすずが悲愴感に包まれており、切なくて見ていられませんでした。

すずの右手

右手を失ったことですずは世界が歪んで見えてしまうのですね。右手は家事などをする利き腕であり、なによりいつも大好きな絵を描いていた大切な相棒でした。すずにとって絵を描くことは自分の存在価値を確かめたり人と交流を持ったりする手段であったので、これから先のことが全くイメージできなくなったのではないでしょうか。すずの喪失感と絶望が非常に強く伝わってきました。

「居場所」の喪失

すずは北條家に嫁に来てから自分の「居場所」がどこなのかずっと探していたように思います。これまで北條家の面々や周作と信頼関係を構築することでようやく見えてきた自分の「居場所」を、晴美の死と自身の右腕を失ったことにより見失ってしまったのではないでしょうか。

下巻その2に続きます。

レクタングル大
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