ルイジアナ州・ニューオリンズ郊外(ダウンタウンから車で1時間)には、19世紀プランテーション(大農園)で栄えた地主たちの豪邸が並んでいます。豪華な邸宅から当時の南部の繁栄を知ると同時に、農園を支えた黒人奴隷労働の実態についても伺い知ることができます。まさに光と闇。
今回は数あるプランテーションの中でもオークアレイ・プランテーションをご紹介。樹齢300年級の樫の木の並木道が美しく一番の人気を誇っています。
Contents
プランテーションツアーとは
ニューオリンズから北西に流れるミシシッピ川沿いに点在するプランテーション(大農園)の大邸宅。ニューオリンズ観光のひとつとしてこの大邸宅を観光するプランテーションツアー(Plantation Tour)が大人気です。
↓ミシシッピ川沿いに広がる地域はリバーロード(River Rord)と呼ばれています。リバーロード沿いにプランテーションが形成されているのがわかります。赤く囲んだのが、今回ご紹介するオークアレイ・プランテーションです。
これらプランテーション経営者たち(プランター)はサトウキビ栽培で財を成しました。生産された砂糖はミシシッピ川の水運を使って各地に運ばれたそうです。
ツアーでの参加
レンタカーを使用しない場合、パブリックバスも運行していないので、ツアー参加が便利です。ニューオリンズ発着で何種類(オークアイプランテーション単独から数種回るものまで)もツアーが催行されています♪
ツアー参加であればVELTRAでの予約がおすすめ。VELTRAならポイントも貯まるのでお得ですよ~。
オークアレイ・プランテーション(Oak Alley Plantation )
リバーロード周辺には10以上ものプランテーションが点在しますが、観光客に一番人気のプランテーションがオークアレイ・プランテーションになります。人気の秘密&一番の見どころはやはり400m近く続く樫の並木のトンネルです。樹齢300年近い巨木ばかりというのが驚き。美しい白亜の邸宅とのセットが美しいです。
行き方
ニューオーリンズから車で約1時間ほどかかります。
↓ミシシッピ川沿いの道を走る。長閑な田園風景が広がっています。
開館時間&入場料金
毎日開館:9:00~17:00(冬季は16:30まで)。入場料金は大人1人で22ドル(18歳以下割引あり)で、邸宅内部見学ツアー(約30分)がセットになっています。
広い無料の駐車場があります。駐車場には観光バスが何台も停まっていました。チケットオフィスでチケットを購入してから入場してください。
奴隷たちの生活に関する展示
チケットを購入して中へ進むと一番先に見えてくるのが、当時プランテーションで労働していた奴隷たちの生活の場である奴隷小屋(キャビン)です。白い粗末な木造の小屋が並んでいました。
キャビンがあった場所は現在大きな木が茂っていますが、当時は木の背も低く、夏は暑かっただろうな…と思いました。
キャビン内部の様子
キャビンの中を覗くことができます。粗末なテーブルにベッドが置かれていました。
↓1枚目写真のベッドが並んでいるキャビンは病人用で『Sick House』と呼ばれていました。プランテーションでの労働は過酷を極め身体を壊す人が多いうえに、Sick Houseの衛生状態は悪く病気で亡くなる人も多かったとのこと。2枚目はの写真のキャビンは、Emiliaという女性が5人の子供と住んでいたというもの。このスペースに6人はかなり狭いと思います。
↓キャビンの近くにあった奴隷たちのトイレも再現されていました。ドアに小さく印が描かれており、左の太陽が男性用で右の月が女性用です。
拘束器具やサトウキビ栽培の道具など
あるキャビン内部に描かれた人の名前。かつてオークアレイ・プランテーションで働いていた奴隷たちの名前だそうです。
↓当時脱走などの罪を犯した奴隷たちを拘束するための道具。右上の器具は首につけるもので、周囲についた棒は再びの脱走を防ぐためのものだそうです(脱走の際、木々に棒がひっかかり円滑な逃亡を妨げる)。
↓サトウキビ収穫の際に使用された農具たち。もちろんすべて手作業です。かなり大ぶりの鎌が使われていますが、サトウキビ栽培の幹は硬く収穫は大変な重労働であったそうです。
↓当時の奴隷たちが身に着けた服。強い日差しを避けるための帽子も。服装などについても主人に決定権があったそうです。
かなり衝撃的だったのは、当時の奴隷の値段表。まるで道具のように一人一人値段が付けられています。若いほうがより高額で取引されているのがわかります。出身地ごとに区別されていたようです。
↓敷地内でよくみられる鉄製の巨大な鍋。これは当時、サトウキビを煮詰めるのに使用した鍋(Sugar Kettle)です。18世紀後半から19世紀初に実際に使用されていたもの。現在では花が浮かべられているという…。奴隷キャビンの展示をすべて見た後にこれを見るとなんとも切ない気持ちにさせられます。
ギフトショップ
奴隷キャビンのそばにカフェ・レストランやギフトショップがあり賑わっていました。サトウキビで作った砂糖が売られていました。
書籍も充実していましたが、特にレシピ本がたくさん(The Plantation Cookbookなど)。この地域の名物であるケイジャン料理のレシピ本は全米でも大人気みたいです。
邸宅見学ツアー
1837年から3年かけて1839年に完成した大邸宅です。サトウキビ農園で財を成したプランターであるジャック・ローマン(Jacques・Roman)が妻になる女性のため造らせました。
専属ガイドによる見学ツアーに参加しないと内部の見学はできないので、見学ツアーに参加しましょう。混雑している場合入口で待つことになります。
ダイニングルーム
ガイドさん1人につき20~30人ほどがまとめて案内されます。ガイドさんは皆19世紀の衣装を着ており、さすが専属ガイドさんだけあって説明はとても丁寧です。
↓こちらはダイニングルーム。テーブルの上にある赤い布で覆われたもの(写真赤印)はなんと扇!扇の下に氷を置き、扇で風を起こすことで部屋を冷やしていたそうです。扇には紐が付いており、部屋の隅で子ども奴隷が引くことで動かしていたとか。当時は農園だけでなく、プランターの邸宅でも奴隷たちが仕事をするのが普通です。
ちなみに氷はボストンから毎月取り寄せていたそうです。贅沢ですね。この辺りの気候はとにかく暑い!ので様々な工夫がされていたことがわかります。
ベッドのパイナップル
2階も見学可能でプランター一家の寝室などを見ることができました。
パイナップルがベッドに置かれていました。この辺りで採れるのかな~と思いますが、実はそうではなく。当時、パイナップルはとても貴重で来客時にパイナップルを出すことで歓迎の気持ちを表しているとか。ただ、一泊させてもらって翌朝新しいパイナップルが置かれていた場合は、長居し過ぎというサインとのこと。なんか京都のぶぶ漬けの話みたいで面白いですね。
↓家具や衣装も再現されています。子供部屋も。
↓2階からバルコニーに出ることができます。廊下にはローマン一家の写真などが飾られていました。
樹齢約300年の樫の木並木
18世紀初頭に植えられたとされる樹齢約300年級の樫の木(オーク)のつくるトンネルは、400m近く続いています。ルイジアナの強い日差しから守ってくれますね。
家を囲むように設置されたバルコニーの奥行きは深く、直射日光を避ける工夫がされているそうです。
これら樫の木をハリケーンなどの自然災害から守るのはとても大変で、入場料のほとんどは木々の保護に使われているとのこと。
見学を終えると、並木トンネルの近くも歩けます。巨木たちは近くでみるとすごい迫力です。
その他周辺のプランテーション
オークアレイの他にも周辺にはたくさんのプランテーション(Laura Plantation や San Francisco Plantationなど)が存在し、1日数カ所周ることも可能です。それぞれに個性があり評価の高い観光地となっています。
Whitney Plantation
オークアレイからミシシッピ川沿いに車で15分ほど走ったところにあります。こちらのWhitney Plantationは、他のプランテーションの展示の中でも特に黒人奴隷たちの生活にフォーカスした唯一の施設だそうです。
管理人は時間の関係で入口までしか見学できませんでしたが、興味のある方は是非訪問してみてください。
さいごに
プランターの繁栄と、一方で過酷な労働を強いられていた黒人奴隷たちの苦しみ。なんとも二面性のある場所でした。景色が美しいのももちろんですが、アメリカ史を知るうえで重要な施設だと思うので是非訪問してみてください。