【ニューオリンズ】国立第二次世界大戦博物館に行ってきた。アメリカから見たWW2の歴史観に触れる。

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ルイジアナ州ニューオリンズ中心部にある第二次世界大戦(WW2)をテーマにした博物館です。ここまで大規模なものはアメリカでもここだけでしょう。

メイン展示である『Road to Tokyo・Road to Berlin』ではアメリカ側から見た第二次世界大戦の歴史に触れることができる貴重な展示の数々。対戦国であった日本人からすると複雑な心境になるものも多いですが、だからこそ見るべきというのが率直な感想です。

行き方や入場料、展示内容についてもご紹介します。トム・ハンクス解説による4Dシアターも必見です。

 

国立第二次世界大戦博物館(The National WW2 Museum)とは

別名、 D-Day Museumとも呼ばれていますが、Dデイとは、戦略上重要な攻撃もしくは作戦開始日時を表す際にしばしば用いられ軍事用語。最も有名なDデイがWW2中に連合国側がドイツ占領下のヨーロッパの侵攻を開始した1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦になります。そのDデイから56年後の2000年6月に設立されました。

 

しかし、なぜこれだけ大規模なWW2ミュージアムがニューオリンズに?と不思議になります。もちろんニューオリンズはアメリカ屈指の観光地なんですが、このような大規模ミュージアムはワシントンのスミソニアンにあるそうなイメージなんですよね(^^;)。

これもノルマンディー上陸作戦と関係があるようで、なんでもノルマンディー上陸作戦で使用された水陸両用ボートが造られテスト運転されたのがニューオリンズだったそうです。その他にもいろいろ経緯はあったようですがその辺は割愛。

余談ですが、このミュージアムのポスター、ニューオリンズダウンタウンの至るところで目にするんですよね(バス停とか)。フレンチクオーターののんび~りとした雰囲気からするとかなり異様な存在感を放っている気が。特に『Road to Tokyo』のポスターは、街を歩いていても複雑な気持ちにさせられます…。

↓施設内にある時の大統領ルーズベルト大統領の銅像。

行き方

ニューオリンズの中心部フレントクオーターから徒歩20分ほどです。周辺には駐車場が充実しているので駐車には困らないでしょう。

開館時間&入場料

開館時間は毎日9:00~17:00まで。4つの建物にまたがる大きな博物館なので、見学には半日以上必要かもしれません

基本入場料は大人26ドルですが、別途有料で2種類のシアターが観れます(どちらか1つで31ドル、2つセットで36ドル)。プラス5ドルにしてはかなり完成度の高いシアターが観れるので時間がある方は是非鑑賞してみてください。

2017年現在上映中のシアターは、トム・ハンクス解説の4Dシアター『Beyond All Boundaries』と『Final Mission~USS Tang Submarine Experience』。

 

管理人は時間の関係でトム・ハンクスのだけ鑑賞しました(感想は下で紹介)。

メインエントランス

ミュージアムは4つの建物から構成されていますが、メインエントランスとなるLouisiana Memorial Pavilionでチケットを購入。

 

チケット売り場はかなり混雑していたので、公式HPからオンライン予約していくのが効率的かもしれません。

 

このメインエントランスフロアもノルマンディー上陸作戦で使用された水陸両用ボートや飛行機など実機の展示があります。

↓ハーレーダビッドソン製のバイク。ハーレー社は陸軍用に多くのオートバイを生産していました。

Road to Tokyo(対日本戦線)

対日本戦線についての展示室です。かなりのスペースを割いて開戦前から戦線の広がり、終戦まで時系列に沿って展示は進んでいきます。当時の映像もかなり流されていてややショッキングな映像もありました。実際にそこで戦った兵士の顔写真と体験談が書かれたパネルも至る所に設置されています。

連合国(ALLIED)対日本(AXIS)という構図

まずは対戦国同士の当時の最高責任者たちの説明。連合国側のアメリカはフランクリン・D・ルーズベルト、イギリスではチャーチル、中国から蒋介石と歴史の教科書で習った方々の顔が並びますが…日本側は昭和天皇になるわけですね。『HIROHITO』と名前で説明がされてあってちょっとびっくり。

 

続いて軍部のリーダーたち。こちらも対比する形で説明が加えられます。

 

パールハーバーからミッドウェー海戦

1941年12月の日本軍による真珠湾攻撃(パールハーバー)から展示は始まります。続いて1942年のミッドウェー海戦の様子など。両陣営の被害状況などが説明。

↓開戦当時、日本の占領下とされた土地が赤く塗られています。

 

戦場の様子を再現する展示

東南アジアの島々や中国大陸などが太平洋戦争での主だった戦場が再現されてあります。ガダルカナルやサイパン島などの戦場の様子も解説がありました。日本軍の決死の抵抗によりジャングルでの戦闘は過酷を極めたそうです。

 

↓展示する戦場の舞台が変わるたびに、各都市までの距離のマイル数が示された看板がたっています。いかに本国と離れた場所で戦っていたかわかりますね。写真の場所は、サンフランシスコまで7,368マイル、東京まで2,640マイルの地点。

↓中国戦線に関する展示室。対中国戦線で活躍したアメリカのFlying Tigers(アメリカ義勇軍の愛称)の飛行機。シャークマウスのペイントがされています。シャークマウスペイントの飛行機はワシントンDCのウドバーハジーセンターにもありました。

両陣営の装備、武器など

アメリカ軍と日本軍の装備や武器が一緒に展示されています。写真左がアメリカ、右が日本ですね。日本軍の装備には日本刀がありました。

↓日本海軍に関する展示。左端の双眼鏡はミッドウェー海戦で戦った戦艦・長門(Nagato)のものだそうです。

両陣営のプロバガンダ

特に印象的だったのが、両陣営のプロパガンダのポスター。日本側がルーズベルトを悪魔みたいに描いてますね…。一方、アメリカ側も日本兵を風刺しています。

 

硫黄島から沖縄戦

戦況が進むにつれて追い詰められていく日本軍。映画『父親たちの星条旗』で一躍有名になった硫黄島での戦いにおいてアメリカ兵士たちが星条旗を立てる写真は記憶に残っています(ワシントンDCに銅像があります)。

 

当時の日本軍の兵士たちから民間人に至るまで「生きて虜囚の辱を受けず、死して罪過の汚名を残すことなかれ」と教育がされていたこと、カミカゼアタック(特攻)についての説明など。細部にわたって解説があります。

激化する日本都市への空襲~そして原爆投下

戦争後期、制空権を完全に失った日本はB29による度重なる本土空襲を受けました。写真の赤く描かれた日本地図と爆撃された都市名と何%の被害であったかが記載されています。興味深いのが、当然日本の都市の規模感がわからない見学者のために、日本の都市名の横に同等規模のアメリカの都市名が書かれていること。

TOKYO・39.9%(NY)、NAGOYA・40%(LOS ANGELES)、OSAKA・35.1%(CHICAGO)、KOBE・55.7%(BALTIMORE)~など。

以前、ワシントンDCのウドバーハジーセンターに行き、原爆投下の任務にあたったエノラゲイ号のガイドツアーに参加したのですが、その際も『日本は、NYやシカゴ級の都市の約半分を壊滅させられてもまだ降伏に至らなかった。よって早期終結のため原爆が投下された』というようなロジックで説明されていたので、やはりそれが当時から現代に至るアメリカ側の主要な認識なんでしょうね。

↓左側の写真は、アメリカ軍が日本の都市上空に巻いたという日本語のビラ。こんなものがあったとは驚きました。文章を読んでみると、『自分や親兄弟の命を助けたければこのビラをよく読んでください。近々に上記の都市に爆撃を加えるので、一般市民は避難してくれ。アメリカは罪のない人達を殺しくはありません』などと書いてあるんですね。当時これを読んだ日本の人々の心境はどんなものだったのでしょうか…。

 

中央のシアターでは、上空から撮影された広島に原子爆弾を投下後、巨大なキノコ雲が出る光景が上映されています。このシーンはやはり立ち止まって見学する人が多かったですね…。

エノラゲイ号のフライトレコードや操縦士の体験談など展示がありましたが、原爆投下による広島・長崎の詳しい被害についてはほとんど説明がなかったように見えました(死者が約~名程度)。どうしても広島にある平和記念館と比べてしまいますが、こちらは戦勝国からみた戦争の歴史、そもそもベクトルが全く違う博物館なので、日本人からすると違和感を感じてしまうのは当たり前なのかもしれません。

終戦~戦争終結を喜ぶ人々

原爆のキノコ雲のフロアからすぐに日本降伏、戦争終結の展示に移ります。

昭和天皇による玉音放送での有名なフレーズ『堪へ難きを堪へ、忍ひ難きを忍ひ』を引用して、『エンペラーヒロヒトは耐えがたいことを耐え(enduring the unendurable)、降伏することを決定した。』と一説がありました。

↓日本のポツダム宣言受諾の調印は1945年9月2日、東京湾の戦艦ミズーリ号の甲板において行われました。その様子を見つめる海軍兵士たちの様子。

↓戦争終結に喜びの声をあげるアメリカの人々の様子。

 

このような流れで、日本人からするとかなり重かったRoad to Tokyoの展示が終了します。

Road to Berlin(対ドイツ戦線)

Road to Tokyoの展示が終わると、すぐ階下にはRoad to Berlinの展示室が。階下へ続くエレベーターの壁一面にナチスの集会写真!とこれまた重い展示が続きます。

 

↑開戦当時のヨーロッパの支配地図ですが、ほとんどが枢軸国側の支配下に。唯一中立を保っていたスイスは白いままなんですが、すごいな…スイス。

連合国(ALLIES)対枢軸国(AXIS)という構図

Road to Tokyoと同様、各国の最高責任者たちの顔写真が。連合国側は先ほどと変わらない顔ぶれですが(ソ連のスターリンが追加)、枢軸国側にドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニがいます。

 

同じく、軍部のリーダーたちの顔ぶれも。

再現される戦場の様子

北アフリカ戦線の様子。1940年イタリア軍のエジプト侵攻に端を発した北アフリカ戦線ですが、砂漠地帯という特異な場所が戦場になりました。

↓雪積もる森林での戦闘も。冬用の軍服の展示があります。

 

ヨーロッパ戦線での戦いにおいて、日系アメリカ人で構成されたアメリカ陸軍第442連隊の功績についても解説がありました。アメリカ国内での深刻な人種問題を跳ね除け、その勇敢な戦いぶりに戦後多くの勲章を受けたとあります。彼らは対日戦でも暗号解読や通訳兵として活躍したそうです。

Dデイ~ノルマンディー上陸作戦

連合国側がドイツ占領下のヨーロッパの侵攻を開始した1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦通称Dデイについての展示。作戦の概要がムービーで説明されます。ノルマンディー上陸作戦というと、トムハンクス主演の映画『プライベート・ライアン』が有名ですね。そこでは最も死傷率が高かったオマハビーチの戦闘が描かれています。

 

連合国側に甚大な被害この作戦の成功により、後のパリ解放にもつながっていきます。

ドイツ降伏による終戦

Dデイを皮切りに徐々に追い詰められていくドイツ軍。勢力図によりよくわかります。

ドイツ本土への空襲も始まり瓦礫の山と化したベルリンの町。その他、多くのヨーロッパ都市に甚大な被害がありました。

ヒトラーの自殺を受け、ドイツは1945年5月8日に無条件降伏しました。連合国軍により解放されるユダヤ人の強制収容所の展示もあり心が痛みます。

以上でRoad to Berlinの展示は終了。Road to Tokyoも含めると圧巻の展示規模でした。

WW2で活躍した戦車や飛行機たち

Road to Tokyo、Road to Berlinの展示室とは別ビル(US Freedom Pavilion)に第二次世界大戦で活躍した飛行機や戦車などを見ることができます。

このフロアに追加料金で鑑賞可能な『Final Nission』のシアターがあります。

トム・ハンクス解説の4Dシアター(別途有料)

全編解説がトム・ハンクスという映画さながらの完成度のシアターです。第二次世界大戦を時系列順に追っていく形で、4Dシアターというだけあってかなりリアルに戦場の様子が再現さえています。全体で40分ほどの上映です。

大砲や弾の音、光がリアルで、冬のシーンではシアター天井から本当に雪が降ってきたりします。アメリカにとって兵士は英雄であり、彼らの犠牲のうえに現在の自由があるというメッセージが読み取れます(やはりここでは『Freedom』という言葉にこだわりを感じる)。

↓なんと偶然、おそらく試写会でトムハンクス本人が座ったシートに座ることができました(真ん中中央辺りにあります)!

レストランやギフトショップ

施設内にはアメリカン料理のレストランとカジュアルなカフェがあるので、食事には困らないでしょう。

ギフトショップもかなり充実。書籍だけではなく子ども向けの玩具もかなりあって、なんと零戦のレゴもありました。

 

軍関連の施設でよく見るポスター類も販売してます。軍事色の強いものばかりなので、日本ではまず見ることのできないもの光景ですね。

 

さいごに

戦勝国であるアメリカから見た第二次世界大戦が描かれているので、違和感を感じる方もいるかもしれませんが、だからこそ足を運んでほしい場所だと思います。

実際、2015年アメリカ国内のミュージアムランキングで第3位(トリップアドバイザー)に選ばれるほど評価の高いミュージアムなんですね。ちなみに1位はNYのメトロポリタン美術館、2位はシカゴ美術館。なんとワシントンDCのスミソニアン航空宇宙博物館を抑えての3位です。

↓ワシントンDCのスミソニアン航空宇宙博物館についても紹介しているので、興味のある方はこちらもどうぞ♪
【ワシントンDC】スミソニアン人気No.1!国立航空宇宙博物館の徹底ガイド!
【ワシントンDC】ウドバーハジーセンター(航空宇宙博物館 別館)徹底ガイド(その1)

レクタングル大
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