コロラド州の州都デンバーにあるコロラド歴史博物館(History Colorado Center)。コロラドの大自然や歴史について学べる博物館ですが、かつてコロラドにあった日系アメリカ人強制収容所の歴史について学べる展示が興味深かったです。
ダウンタウンの一角にありアクセスは良好、2時間もあればざっくり回れると思うのでデンバー訪問の際は是非足を運んでみてください♪
Contents
アクセスと入場料金など
デンバーダウンタウンの端、美術館などが集まるシビックセンターパークの近くにあります。コロラド州議事堂からも徒歩5分ほどなので観光の中心部に位置しています。
入場料金&開館時間
入場料金は大人1人12ドル。65歳以上または学生は10ドルになります。
基本的に毎日開館。開館時間は10:00~17:00まで(時期により変動あり)です。詳しくは公式HPから確認してみてください♪
駐車場
周辺の路上には路上パーキングメーターがたくさんあります。1時間$1と安価に利用できますが、駐車時間に制限(最大1時間など)があるものばかりだったので、長時間美術館に滞在する場合は美術館周辺のパブリックパーキングに駐車したほうが良いかもしれません…。
4階建ての吹き抜け構造、カラフル・コロラド
博物館は4階建ての吹き抜け構造になっていて、グランドロビーを囲むように展示室があります。グランドフロアの床にはコロラドの地図が。山が近いことがわかります。
↓グランドフロアにあるカラフル・コロラドの看板。コロラドの持つ様々な自然に由来した州のニックネームのようなものです。記念撮影におすすめです。
コロラド・ゴールドラッシュの歴史
19世紀後半、コロラド州のロッキー山脈麓で砂金が発見されたことから、コロラドにおけるゴールドラッシュの歴史が始まりました。その後、鉱脈における金・銀・その他鉱物の採掘が盛んに行われましたが、その鉱山労働者(Miners)たちの労働は危険を伴う過酷なものであったそうです。
↓当時の鉱山の様子が再現されていました。実際に鉱山に入っていく展示です。当時の労働者たちの出勤簿のようなボードが。
古くは手作業で穴を掘る作業が主流でありその過酷さが伺えます。ただし、その過酷さ故に賃金は良く、報酬目当てに多くの若者が従事したそうです。
時代が進むと、採掘にはダイナマイトが用いられるようになったそうです。他、当時地下へ下っていったエレバーターが再現(かなりガタガタ煩い)されていたりと充実した展示です。
日系アメリカ人の強制収容の歴史
そして、日本人観光客として是非見学してほしい展示が、第二次世界大戦期のコロラドにおける日系アメリカ人の強制収容の歴史についてです。正直、ここに来るまでコロラドに強制収容所があることも知りませんでしたし、歴史博物館にこのように詳細な展示がるとは思いませんでした…。
3本のショートフィルム①:正当化された強制移住
スクリーンがあり、3本の日系人強制収容にかかるショートフィルムを鑑賞することができます。内容をざっと説明しますが、訳がおかしかったりしたらすみません。
1本目は、『正当化された強制移住(Justifying Relocation)』。第二次世界大戦開戦前夜、”敵国”である日本をルーツに持つ日系アメリカ人たちの強制隔離が1942年ルーズベルト大統領による大統領令により正式に決定されました。これにより、当時カリフォルニアなどの西海岸に多く暮らしていた日系人たちがコロラドを初めとする内陸の州に強制的な移住を強いられることになったそうです。
1942年コロラド州に作られたアマチ(Amache)収容所の様子や日系人たちの移住の様子を当時の映像で見ることができます。
全ての強制収容所は人里離れた内陸部、更に多くは不毛の砂漠地帯に作られたそうです。逃亡を防ぐため、鉄線で覆われ銃口を向けた警備員が常に居たそうなのでその厳重さがわかります。
印象的だったのは、当時収容所に収容された少女の、『冬は寒く、夏は暑い。砂塵に覆われた不毛の土地。よくこんな悪い土地を見つけてきたものだと驚いた』という言葉でした…。
3本のショートフィルム②:日系人を救った政治家、カーコロラド州知事
2本目は、『カーコロラド州知事、良心のための闘い(Stand up for decency)』。日本の真珠湾攻撃以降、日本人に対する反発は大きく、当時の世論は日本人の強制移住、収容に賛成するものばかりでした。
そんな中で当時の州知事として唯一反対意見を主張したのが、当時のコロラド州知事、ラルフ・ローレンス・カー氏であったそうです(正確にいうと、強制移住には賛成したが、収容は非人道的、アメリカ憲法違反であると反対していた)。しかし、戦時下のこのカーの寛容さを持った行動は人々から賛同を得ることはできず、結果的に彼の政治生命は絶たれてしまうことになったとか…。
ただし、戦後彼の行動は再評価され、今では州議事堂の柱に彼のレリーフも飾られています(コロラド州議事堂は歴史博物館から徒歩5分ほどの所にあります)。ちなみに、ダウンタウンの19番ストリートにある小さな日本人街にも『日系人を救った政治家』として、彼の功績を称えた胸像があるそうです。
全州知事が強制収容に賛成する中、一人だけ反対するなんてすごい勇気ですよね。彼の非人種差別的・人道的な考え方はもちろんのこと、大勢に迎合せず、政治生命をかけて自らの信念を主張した彼の勇気が素晴らしい…。再評価されて本当に良かったと思うのです。
3本のショートフィルム②:日系アメリカ人、斎藤ファミリーについて
2本目は、『斎藤ファミリー、その忠誠心と犠牲(A Story for loyalty and sacrifice)』。実際にコロラド州に在住していた日系人家族斎藤ファミリーについて描かれたものでした。日系一世であった斎藤さんの息子さんたちが、アメリカ軍の軍人として従軍したというもの。アメリカへの忠誠心を示し、日系アメリカ人の地位向上のためでもあったと言われています。
着のみ着のままな移住…
ショートフィルムの他に、当時の強制移住の様子を示す生生しい品々の展示も。日系アメリカ人のアマチへの強制移住が決まってから、彼らは十分な準備期間は与えられず、しかも移動の際の持ち物はわずかな手荷物しか認められなかったそうです。
↓『人生を2つのスーツケースに詰めて…』なんとも切ないタイトルです。
トランクの中身が再現されていました。当時の衣服や子供のおもちゃなど。
アマチ収容所のバラックの再現
アマチ収容所で彼らが住んだ粗末なバラックがそのまま再現されており、中に入ることができます。
仮設住宅のようなバラックは風通しがよく、冬は大変寒かったそうです。粗末なベッドに、当時の生活用品が。
バラックの隅に下駄。細かいところまで再現されていますね。
日本語の説明ボードが!
かなりのスペースを使って強制移住について展示されていたのですが、驚いたのが日本語でも説明が流れるパネルがあったことです。これが読める訪問者は少ないだろうに…。
日本語と英語で交互に説明が流れる仕組み。こういう工夫が嬉しいですね。
ところで、日系人強制移住の展示からはそれますが、かつてコロラドでのKKK(クー・クラックス・クラン)の活動についても展示が少しありました。
薄暗いフロアにいきなりコレがあるので、ギョッとしちゃいます。不気味だ…。KKKといえば白人至上主義をうたう秘密結社とかつて歴史の教科書で習いました。一度みたら印象に残るこの姿…アメリカの現代アート作品などでも批判的な意味で?登場したりしてるのを見かけました。かつてコロラドでも活動があったんですね。
アメリカン・ロッキーやスキーの歴史
コロラドといえば、アメリカンロッキーにコロラドスキー♪コロラドの魅力がたっぷり詰まった展示ですね。
アメリカンロッキー国立公園はなんと最近、創立100周年を迎えたそうで。長きにわたりコロラドの人々から愛されている山です。山を守るレンジャーの制服などが展示。
その他、スキー関連の展示。スキー板の形状やスキーウェアなどの変遷がわかります。スキー板で作った椅子なんかもありました。決して座りごごちは良くないですが(笑)
コロラド州都、デンバーはスポーツの街としても有名。アメリカ4大プロスポーツチームも揃っているんですね。一つの街に4つすべてが揃うのはアメリカ全土でも11州しかないらしく珍しいです(単純にデンバーが大きい都市ってこともありますが…)。
↓MLBのチームはコロラド・ロッキーズ!ホーム球場は世界一ホームランが出やすい球場として有名です(標高が高いため♪)。
コロラドの大自然と開拓の歴史
アメリカの原風景ともいえる大自然を堪能できるコロラド。山付近を走ると『シカ飛び出し注意』の看板をよく見かけます。
↓こんな光景も日常茶飯事なのでしょうか(笑)
コロラドもかつて多くの移民たちにより開墾され切り開かれてきた土地。過去と現在のコロラドでの農業の様子についても学べます。
農地面積の推移など数値的にも把握できるパネル。開墾面積の増加に比べ、農家数の推移はあまり変わらないんですね!
コロラドでの開墾、農作物の収穫は年によっては過酷を極め、バッタの大群の襲来によって農作物が全滅なんて年もあったそうです。このエピソードは小説『大草原の小さな家』で読んだことがありましたが、これほどまでとは…。自然の厳しさと共に人々が生きてきたことがわかります。
↓ある街を襲ったバッタ被害の様子を伝える展示。洗濯物に群がるバッタたち…。
↓こちらの建物内では、かつてコロラドの小さな町を襲った砂嵐を室内から体験できます。昼間にも関わらず、突然外が真っ暗になり、轟音が響きます。当時の様子を臨場感たっぷりで体感できました。
ウェスタン・アメリカンアート
最上階フロアには、ウェスタン・アメリカンアートの展示がありました。時間が無く早歩きで回ってしまいましたが、素敵なアートや展示がたくさんあります。
↓西部の生活の様子がわかります。ザ・カーボーイですね。すごいズボンだ…。
↓コロラドの原風景からネイティブアメリカンアートの展示も。
お隣のデンバー美術館でもたくさんのネイティブアメリカンアートを楽しめるので、そちらにも是非足を運んでみてください♪
さいごに
特に日系アメリカ人強制収容の歴史はかなり重いテーマでしたが、日本人として知らなければならない歴史だと思うので今回展示を見ることができて本当に良かったです。
その他にもコロラド、ひいてはアメリカの歴史を知るうえで勉強になる展示がたくさんあります。お子様でも楽しめる工夫がされているのが良いですね。退屈しません。
★博物館の近く、デンバー美術館とコロラド州議事堂についてはこちらをどうぞ♪
デンバー美術館の見どころを紹介。全米屈指のネイティブアメリカンアート、子供も楽しめる!
【デンバー】コロラド州議事堂の内部を見学。豪華絢爛な内部は必見!見学ツアーもあり。